「オンライン英会話では、なぜネイティブ講師でなくてフィリピン人講師ばかりなの?」
「フィリピン人講師のレッスンで本当に英会話が上達するの?」
これからオンライン英会話を始めようと考えている人で、こんな疑問をもっている人は多いのではないでしょうか。たしかに、オンライン英会話では、ネイティブ講師や日本人講師、その他の国の講師はいるものの、ほとんどのサービスではフィリピン人講師を採用しています。
僕自身フィリピンの人たちとは仕事の関係で長いつき合いをもってきたこともありますので、この記事では僕の経験談もまじえて、フィリピン人講師についての疑問の数々を解説していきます。
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なぜオンライン英会話ではフィリピン人の講師が多いのか?
オンライン英会話ではネイティブ講師以外にもクロアチア、セルビア、南アフリカ、ルーマニアなどの国の講師も見かけますが、何と言っても多いのがフィリピン人の講師ですね。そこでまずは、なぜオンライン英会話ではフィリピン人講師がこんなにも多いのかについて解説します。それにはつぎのような理由があります。
理由1:英語が国の公用語になっている
フィリピンではフィリピン語(元はタガログ語)を国語とし、公用語としてフィリピン語と英語を指定しています。フィリピンは日本と同じく島国ですが、島ごとにそれぞれ異なる言語があるともいわれ、その言語数は100ほど。そのため、言語の異なるフィリピン人の間では公用語のフィリピン語を使って意思の疎通を図ったり、教育現場では英語が使われたりしています。
僕のフィリピン人の仕事仲間は英語とタガログ語はもちろんのこと、スペイン語と地方言語を5言語と全部で8言語もあやつる人です。日本のように単一言語ではなく、他言語の国ではそういった人は珍しくありません。
理由2:人件費が低い
なぜオンライン英会話は従来の英会話スクールと比べて低価格でサービスを提供できるのでしょうか。それは運営コストのかかる店舗をかまえず、そして低賃金の国の英語話者を現地採用することで、低価格サービスを実現しているからです。
フィリピンでは日本や欧米諸国に比べて人件費が低く、平均月収は日本円にして32,500円(numbeo調べ)で、日本のおそよ十分の一の賃金です。
理由3:英語での高学歴者が多い
フィリピンでは小学校から国語と歴史以外は英語によって授業がなされます。その後も大学まで英語による教育を受けるので、高学歴になればなるほど英語能力の高い人材が多いのです。
大学卒業者は毎年40万人以上であり、その多くは培った英語力を武器として国際的な仕事に従事しています。英語能力の高い人材を育てて外国資本による雇用を増やすことは、これまで国策として続けられてきたことで、この十数年でその成果が大きく表れてきました。
理由4:アウトソーシングで急成長と遂げている
フィリピンはここ十年で目覚ましい経済発展を遂げています。高い学歴をもったフィリピン人労働者は流暢な英語を話すために、とくに米国企業などのアウトソーシング先として英語で応対するコールセンターがフィリピン国内に多く設置されてきています。
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)業界も毎年二桁成長を続けており、65万人以上のフィリピン人の雇用を生みだしています。これもフィリピン人が英語に堪能であることで興すことができた産業のひとつです。もちろん、このなかには日本のオンライン英会話サービスも含まれていることは言うまでもありません。
こういった理由から、フィリピン人講師はオンライン英会話サービスのためにはなくてはならない存在となっています。
オンライン英会話でフィリピン英語の訛りが移る心配はないか?
オンライン英会話でフィリピン人講師のレッスンを受けるうえで不安に感じるのが、フィリピン人なまりの英語を教えられてしまうのではないかということだと思います。
これについては、まず全く心配することはないと僕は考えています。その理由について解説します。
理由1:しっかりと選考された講師が採用されている
フィリピン人が英語に堪能だからといっても、たしかに訛りの強いフィリピン英語を話す人はいます。しかし、そういったフィリピン人たちは学歴も十分ではなく、英語を教える能力もない人たちで、まず英語の講師になろうとはしない人たちです。
フィリピンで英語の講師を目指すような人たちは高学歴で、小学生の頃から英語をみっちり勉強してきており、英語を武器にして自分の将来をつかもうとしている人たちです。コールセンターなどで働くフィリピン人はニュートラルで流ちょうな英語を話すため、電話をかけているアメリカ人が、フィリピン人と話しているとは気がつかないほどです。もちろん彼らは英語のキビシイ発音や応対の訓練を受けてきた人たちです。
オンライン英会話の講師についても同じことが言えます。フィリピン人講師のほとんどは英語を使って仕事をするべく長年学んできた人たちなのです。
理由2:訛りはそう簡単には移らない
僕はフィリピン人と10年ほど一緒に仕事していた時期があります。その期間は彼らとはもちろん英語でコミュニケーションをとり、ほとんど寝食を共にするようにして過ごしていました。だからと言って、誰かに僕の英語が「フィリピン訛りの英語」と言われたことは一度もありません。まして、英会話の講師となるようなフィリピン人はしっかりと発音が矯正されています。
訛りはそう簡単には移らないのです。関東の人が関西の人と毎日1時間ほど話したとしても関西弁にはならないでしょう。仮に多少移ったとしても、それは一時的なものでしかありません。
基本的に私たちが話す英語は日本人訛りの英語になるのです。それは母語である日本語という言語をベースとしたうえに英語を話すからです。自分の母語訛りの英語を矯正するには、かなり意識的になって長いあいだ訓練する必要があります。でも、日本人でわざわざフィリピン人訛りの英語に矯正しようとする人はいないでしょう。
別の観点から訛りについて考えてみます。ネイティブといっても各国、各地方ごとに訛り(ダイアレクト)がありますので、ネイティブ英語というひとつの英語があるわけではありません。アメリカ英語とイギリス英語が異なることはよく知られています。水のウォーター(Water)はアメリカでは「ウァダー」のように発音されますし、イギリスでは「ウォツァ」、また同じイギリスでも「ウォア」と発音されることもあります。ネイティブでさえもそれぞれ訛りをもちながら、コミュニケーションの手段として英語が使われているのです。
ちなみにフィリピンは50年近くアメリカの統治下に置かれていたこともあり、発音や文法はアメリカ英語を受け継いでいます。
フィリピン人講師の英語力で英会話の指導は大丈夫?
英語が母語でないフィリピン人から英会話を習っても大丈夫なのか?フィリピン人に英会話の指導能力があるのかと心配される方がいるかもしれません。しかし、それを言うなら英語を母語としない日本人講師についても同じことが言えるはずですね。結論から言えば、フィリピン人には英語を教える十分な能力があると言えます。
先ほど述べたように、フィリピン人たちは小学校から大学まで英語によって教育を受けています。外貨を得るために、英語が国際レベルで話せる人材を増やすべく、フィリピンの国策として進められているのです。
その国策が功を奏して、フィリピンは世界のコールセンターの新しい首都となり、英語応対の海外コールセンターでフィリピンはあのインドを抜いて世界一位となりました。
- 1位 フィリピン
- 2位 インド
- 3位 ポーランド
- 4位 アイルランド
- 5位 スペイン
- 6位 カナダ
フィリピンのコールセンターに最も多く委託されているサービスには、応対サービス、受注業務、技術サポート、カスタマーサービスなどがあります。コールセンターを含む英語応対のアウトソーシング(米国などから受ける外注業務)で働くフィリピン人は100万人を超えており、この分野の成長率は年間30%となっています。
つまりフィリピンでは、多くの人が英語を使って仕事をすることを目指しており、そういった高収入の仕事に就くことは生活の安定につながるために、誰もが努力して英語を学ぶのです。ですから、フィリピン人にとって英会話講師は多くの英語を使った職場のうちのひとつの選択肢にすぎません。
フィリピンの英語に関したその他の指標では、英語話者の人口が世界5位、英語を第二言語とする人口で世界4位、英語能力指数でアジア2位、世界20位を誇っています。
【英語話者の人口世界5位】
- 1位 米国
- 2位 インド
- 3位 パキスタン
- 4位 ナイジェリア
- 5位 フィリピン
【英語を第二言語とする人口世界4位】
- 1位 インド
- 2位 パキスタン
- 3位 ナイジェリア
- 4位 フィリピン
【EF英語能力指数アジア2位】
- 1位 シンガポール
- 2位 フィリピン
- 3位 マレーシア
- 4位 香港
- 5位 インド
フィリピンは、EF英語能力指数では世界20位(2019)で、5段階カテゴリーのうち上から二番目の「高い英語能力」として評価されています。
ちなみに日本はアジアで11位、世界で53位で、カテゴリーは四番目の「低い英語能力」という、先進国の中では不名誉な結果となっています。このまま経済大国という名のうえに胡坐をかいたままでいたら、いつか日本は世界の孤島になってしまうのでは?やはり英語普及の必要性を感じてしまいますね。
オンライン英会話のフィリピン人講師のメリット
ここまで読んでいただいた方には、フィリピン人講師の英語能力については納得していただけたことと思います。では、オンライン英会話でフィリピン人講師のレッスンを受けることで、私たちにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
①英会話レッスン料金の引き下げを実現した
賃金が日本の十分の一であるフィリピンの人材を現地採用することで、コストを削減できることに、日本のオンライン英会話サービス各社は着目しました。
従来の日本に在住する外国人による英会話レッスンでは、コスト面から生徒を5~10人と集めてグループレッスンとするのが一般的でしたが、フィリピン人を講師として採用することで、これまで利用者は高額でなかなか手を出せなかったマンツーマンでの英会話レッスンを受けることができるようになりました。
②フィリピンの国民性がやる気を起こさせてくれる
アメリカが植民地とする以前は、フィリピンは327年の間、スペイン統治下におかれたていましたので、ラテンの気質が強く、陽気でフレンドリー、家族や友達を大切にするのが国民性です。
個人の利益追求ばかりに意識を向けるようになった日本を含めた欧米諸国とは、人に対する接し方や人生観まで異なる気がします。フィリピン人講師のレッスンを一度受けてみれば分かると思いますが、きっとレッスン中も笑顔と励ましの声であなたの英会話の上達を助けてくれるでしょう。
③英語学習のツボを心得ている
フィリピン人は学校で英語で教育を受けてきたとはいえ、英語は彼らの母語ではなく、私たち日本人と同じく第二言語です。ですから、英語を第二言語として長年学んできた経験者としてネイティブには持ちえない学習のツボを心得ているはずです。そういった視点から、レッスンでの学習アドバイスを受けられるのは学習者にとっての利益となります。
オンライン英会話のフィリピン人講師のデメリット
続いて、フィリピン人講師のデメリットについても考えてみます。デメリットと言っても、レッスンを受ける私たちには、それほど見当たらないのですが、主にはつぎのようなものがあげられるでしょう。
①インフラが安定していない
フィリピンでは国策として社会インフラの改善のために多くの予算を投資してきましたが、地方によっては電気の供給やインターネット回線がまだ不安定なところもあります。そのため、レッスン中に音声が聞き取りにくくなったり、停電で予約がキャンセルされたりする可能性があることは覚えておいた方がよいでしょう。そんなときは、私たちも彼らに見習って大らかな気持ちで理解してあげたいものです。
②職場への定着意識が薄い
英語が堪能で高学歴のフィリピン人は、条件のよい仕事に就くことを目標に英語や勉学に励んできた人たちです。ですから、少しでも条件の良い職場が見つかれば、仕事を変えることに躊躇はありません。彼らにとってオンライン英会話の職場はステップのひとつにすぎないのかもしれませんので、これは仕方のないことです。ですから、気に入った先生が見つかってレッスンを受けていたのに、急にいなくなってしまったという事態も起こりえますが、そんなときは先生の成功を願ってあげましょう。
フィリピン人とかかわってきた僕の経験から
先ほども述べたように、僕自身、フィリピン人たちと10年ほど一緒に仕事していた時期があります。合計すれば数百人のフィリピン人たちと知り合いになりました。
そのなかでもフィリピン人の同僚のひとりとは、一緒に世界各国を飛び回って仕事をしてきました。まさに寝食を共にして戦ってきた戦友のような仲であり、僕にとって彼は今でも人生の中でも数少ない親友のひとりです。彼は英語やフィリピン語(タガログ語)はもちろんのこと、その他にもフィリピンの地方語を5言語、それにスペイン語もあやつりました。そして、数年のうちには日本語も流暢に話すことができるようになりました。
彼らにとって言葉は生きるためのツールであり、語学を覚えるのに日本人のように難しく考えることはありません。ですから、どんな言語でもどんどん吸収して覚えていってしまうのでしょう。フィリピン人にとって英語は主要な情報源です。ですから、映画、雑誌、ニュースも英語で不自由なく見ることができます。
インド人やパキスタン人、他のアジア諸国の英語に比べれば、フィリピン人の英語は日本人の耳にとても聞き取りやすい発音だと言えます。高学歴のフィリピン人なら、ほぼアメリカ英語と変わりません。そしてなによりも、一日中陽気で笑いの絶えないフィリピンの国民性は、ちょっとしたことで気難しくなりがちな日本人の心を解きほぐしてくれます。
これは語学の上達には「楽しく学ぶ」ことが重要な要素のひとつであることを考えると大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
まとめ:中級者までならフィリピン人講師で十分な英会話レッスンを受けられる
なぜオンライン英会話ではフィリピン人講師が多いのかという問いに対して、フィリピンという国の国策や歴史、国民性という視点から、そして僕自身の経験をまじえて考察してきました。
僕個人の考えとしては英会話の実力が中級者までであれば、フィリピン人講師の英会話レッスンで十分に上達することができると思います。あなたがどうしてもネイティブの英語にこだわるのであれば、上級者になってからネイティブとの英会話で自分の英語に磨きをかければ良いでしょう。コスト面から言ってもそのほうが上達にプラスとなるはずです。つまりネイティブ講師と30時間話すより、フィリピン人講師と300時間話した方がよほど英会話の上達には有利だということです。
英語はその人の世界と人生の選択肢を広げてくれる強力なツールとなってくれます。あなたもオンライン英会話で英語力を磨いて、自分の世界を広げてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
[参考]
magellan solutions: The Philippines is the Top Call Center Country in the World
SV Staffvirtual: CALL CENTER CAPITAL OF THE WORLD
Wikipedia: List of countries by English-speaking population
EF: EF English Proficiency Index
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